蘆花・下子の文書置き場

言葉を通じた知の獲得は、決して起こり得ないだろう。

小説

肯定(四)

目次 肯定(一) - 蘆花・下子の文書置き場 肯定(二) - 蘆花・下子の文書置き場 肯定(三) - 蘆花・下子の文書置き場 肯定(四) - 蘆花・下子の文書置き場 四 翌朝、佑子を完全に失った徹はどこを見るということもない目を漂わせながら、顔を洗い駅へ歩…

肯定(三)

目次 肯定(一) - 蘆花・下子の文書置き場 肯定(二) - 蘆花・下子の文書置き場 肯定(三) - 蘆花・下子の文書置き場 肯定(四) - 蘆花・下子の文書置き場 三 遠い山が見える方角に夕陽が灯り、時計は夕方の五時を指していた。居残りが好きな人々を横目…

肯定(二)

目次 肯定(一) - 蘆花・下子の文書置き場 肯定(二) - 蘆花・下子の文書置き場 肯定(三) - 蘆花・下子の文書置き場 肯定(四) - 蘆花・下子の文書置き場 二 何の変哲もない、何一つ得るものがない日であった。何故こうも非文化的な作業の繰り返しをす…

肯定(一)

目次 肯定(一) - 蘆花・下子の文書置き場 肯定(二) - 蘆花・下子の文書置き場 肯定(三) - 蘆花・下子の文書置き場 肯定(四) - 蘆花・下子の文書置き場 一 二月十七日の上野は、雪の時期が既に終わってしまっていて、頬が痛いくらいの寒さこそ残って…

淡い明瞭

乳白色のタイルが敷き詰められた首都のごく普通の白い壁にあふれた街路では、路面を淡い影が今朝も行き交っている。コメット色をした照明柱は、薄っすらとして透き通った太陽を受けて脇に微かな一筋の暗がりを作っていた。この付近は下品な街の匂いもしない…

文化的な死と、文字的文化から遠いところの人

下子とは文章から最も遠い人間です。 はじめ、彼は自らが文章を読めない等とは思ってもいませんでした。幼い頃、一・二行の文であれば、 ――他の日本人がそうであるように―― 幾度となく読む機会があり、また実際に読めていたのだろうと思います。君は読めてい…