蘆花・下子の文書置き場

言葉を通じた知の獲得は、決して起こり得ないだろう。

意味の捏造と疎外

人間が垂直感染してしまった「意味」という認知上の障害について。 I. 意味という習慣 事物や人間的存在は、その存在自体が予め主体の前に現れ、これに続く形で意義や目的が付与される。この過程は、他者によって目的を予め設定された上で創造された事物に対…

教育という装置の発明

貴方は教育を受けたことがあるだろうか。私は生涯で一度も教育を受けたことがない。故に教育を外からしか眺められないが、外から眺められた教育が如何なるものであるかを被教育者たちに表示しておきたいと考えた。以下はその目的のために費やされる。 I. 教…

2016 年 3 月のとある手紙

○○○ さま お終いです。 僕は貴女に逢えて嬉しかったし、貴女の中に僕が童貞を失った頃の女の人の面影を得るようで、心身ともに満たされようとしたがっていました。 それも、もう終わりです。まず、貴女に拒絶されるのが辛い。貴女に嫌な想いを向けられること…

中心化された限定コードの世界

社会は恣意的に分化させられてきた。 I. 緻密コードの天下り的転倒 かつてバーンステインは階層集団に対して独自の言語コードの存在を仮定し、更にその副作用として職業の分化を招くことを示した。乃ち、社会的下層に位置する集団は、事物や主張を発言者の主…

論文と詩

その文章 ――彼―― は、学術論文として投稿された散文詩なのだった。 I. 現象 彼らを見出したのは秋も暮れかかったとある紺色の空の日であった。彼らは一見とある人文科学上の議題を扱っており、彼らに目を通した私は底知れない欺きを感じ取り、更にそこから生…

アイデンティティによる疎外

0. 問題 アイデンティティとは必須だったのだろうか。 1. アイデンティティ・ドリヴン 冒頭の一文のみでは問題の射程を制限することが充分ではないため、換言しておく。人間的な主体 (以降「主体」と呼ぶ) は自身が社会 ――あるいは局所的なコミュニティ―― に…

肯定(四)

目次 肯定(一) - 蘆花・下子の文書置き場 肯定(二) - 蘆花・下子の文書置き場 肯定(三) - 蘆花・下子の文書置き場 肯定(四) - 蘆花・下子の文書置き場 四 翌朝、佑子を完全に失った徹はどこを見るということもない目を漂わせながら、顔を洗い駅へ歩…

肯定(三)

目次 肯定(一) - 蘆花・下子の文書置き場 肯定(二) - 蘆花・下子の文書置き場 肯定(三) - 蘆花・下子の文書置き場 肯定(四) - 蘆花・下子の文書置き場 三 遠い山が見える方角に夕陽が灯り、時計は夕方の五時を指していた。居残りが好きな人々を横目…

肯定(二)

目次 肯定(一) - 蘆花・下子の文書置き場 肯定(二) - 蘆花・下子の文書置き場 肯定(三) - 蘆花・下子の文書置き場 肯定(四) - 蘆花・下子の文書置き場 二 何の変哲もない、何一つ得るものがない日であった。何故こうも非文化的な作業の繰り返しをす…

肯定(一)

目次 肯定(一) - 蘆花・下子の文書置き場 肯定(二) - 蘆花・下子の文書置き場 肯定(三) - 蘆花・下子の文書置き場 肯定(四) - 蘆花・下子の文書置き場 一 二月十七日の上野は、雪の時期が既に終わってしまっていて、頬が痛いくらいの寒さこそ残って…

淡い明瞭

乳白色のタイルが敷き詰められた首都のごく普通の白い壁にあふれた街路では、路面を淡い影が今朝も行き交っている。コメット色をした照明柱は、薄っすらとして透き通った太陽を受けて脇に微かな一筋の暗がりを作っていた。この付近は下品な街の匂いもしない…

文化的な死と、文字的文化から遠いところの人

下子とは文章から最も遠い人間です。 はじめ、彼は自らが文章を読めない等とは思ってもいませんでした。幼い頃、一・二行の文であれば、 ――他の日本人がそうであるように―― 幾度となく読む機会があり、また実際に読めていたのだろうと思います。君は読めてい…

文書置き場について

ここは蘆花・下子の文書置き場です.主に, 恒常的に掲載しておくべき文書 自分のための備忘録 私の書いた手紙 等を残しておきます. 私の名前は「桜木 = 下子 = 蘆花 (さくらぎ・げし・ろか)」とします.自身についてはそのうちに記載します.